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〈陶芸・工芸〉コレクション

〈陶芸・工芸〉コレクションのイメージ

陶芸・工芸コレクションの概要

文化勲章受章者や文化功労者、重要無形文化財保持者(人間国宝)、山口県指定無形文化財保持者といった巨匠たちの作品をはじめ、山口県在住や山口県ゆかりの陶芸家たちの作品など、約800点の近現代陶芸・工芸作品・資料を収蔵しています(2022年現在)。とくに近現代萩焼に関しては昭和以降今日までの茶陶や花器、オブジェ作品の代表的な作品が充実しています。

※その他の所蔵作品は「収蔵作品検索システム」でご覧ください。

※所蔵する陶芸作品は普通展示で展示し、定期的に入れ替えています。

陶芸とは

粘土(主として土器・せっ器(「せっ」は火+石)・陶器の原料)や岩石(主として磁器・炻器の原料)を加工して長石や石英などを配合した造形素材を、加熱によって高温化学反応をおこさせた焼成物(やきもの)が、陶磁器です。この陶磁器について美術的観点から評価が加えられた場合、陶芸という概念(考え方)が成立します。また同様の理由から、産業から離れた個人作家による芸術活動としての陶磁器づくり自体も陶芸と呼ばれます。日本においては、1920年前後から芸術創作としての陶磁器づくりの思潮が広まり、民芸運動の影響や昭和初期における桃山茶陶再興の動き、太平洋戦争後の前衛陶芸運動などをへて、陶芸という呼称がしだいに定着してきました。現在、陶芸とは、伝統工芸、創作工芸(日展系)、クラフト、オブジェを含めて、詩人や音楽家、舞踊家、画家の行為と同じように、陶芸家自身の表現を目的とする明確な芸術意識によって制作された、陶磁工芸・陶磁芸術を指します。

鑑賞のポイント

陶芸は、作家自身の表現を目的とする明確な芸術意識による制作です。現在は器形だけではなく、純粋な立体造形や陶像、陶壁、インスタレーション(場所や空間全体を作品として体験させる表現手法)など、現代美術とも通じる多様な表現が現れています。このような陶芸作品を、たんなる道具として解釈しようとするなどは論外ですが、「用の美」という工芸観や「時代精神」、「地域性」、「生活感情」といった観点から固定的に眺めて批評することもいまや意味を失いつつあります。陶芸は、素材と技術のもとに絶えず自らを見つめる行為によって表現される造形なのです。その過程で陶芸家が自己をいかに真摯に受けとめてきたかを感じ取るための、素直なまなざしと豊かな想像力が私たちに求められてきています。

陶芸の主な所蔵作品

三輪壽雪(十一代休雪)

三輪壽雪(十一代休雪)
(みわじゅせつ(じゅういちだいきゅうせつ))
明治43年(1910)~平成24年(2012)
重要無形文化財「萩焼」の保持者 [昭和58(1983)年認定]

鬼萩花冠高台茶碗 銘 命の開花
(おにはぎかかんこうだいちゃわん めい いのちのかいか)

平成15年(2003)
高さ11cm、口径16cm
HUM/K161

Miwa Jusetsu (Kyusetsu 11th)
Teabowl with flower shaped foot, 'Inochi-no-kaika', Hagiware, Oni-hagi type.
2003.

三輪壽雪さんは萩市に長州藩御用を務めた三輪窯九代雪堂の三男として生まれ、1967年に次兄(三輪休和、十代休雪)の隠居にともない十一代休雪を襲名しました。この作品の大輪の花びらを支える花萼(かがく)のような高台は、家督を譲って壽雪と号した2003年に初めてつくったかたち。畳付(たたみつき)の中心から十字に開いた四弁の形状が、粗い砂を混入させた素地土との烈々たる交感のうちに立ち上げられた、豪放な器の形態を引き締ったものとしています。自己表現の作陶へと邁進(まいしん)する作家のほとばしるような精気が、たっぷりとした寛(ひろ)さの造形を生み出しました。

秋山 陽

秋山 陽
(あきやま よう)
昭和28年(1953)~

Heterophony 3
(ヘテロフォニー 3)

平成19年(2007)
高さ223cm、幅185cm、奥行77cm
HUM/K527

Akiyama Yo
Heterophony3, Stoneware.
2007

秋山陽さんは下関市生まれで、現在は京都市在住。この作品は、轆轤成形(ろくろせいけい)によって立ち上げられた器的構造体を積層(せきそう)させる手法で、中心軸の傾きに変化を加えながら総体として大きな動勢を示した大型オブジェです。この作品と自らの造形理念を追求した創造性が評価され、2010年の第17回MOA岡田茂吉賞の工芸部門大賞を受賞。また翌年にはこれを展示作品の核とした「秋山陽展」(大阪、アートコートギャラリー、2010年)で毎日芸術賞も受賞しました。天に伸び上がるように構成された陶土の集合形態は、素材のもつ物質性を造形表現の主格として位置づけることへの積極的なアプローチであり、その力強い成功作例といえるでしょう。

東洲斎写楽 三世瀬川菊之丞の田辺文蔵妻おしづ

金子 司
(かねこ つかさ)
昭和45年(1970)~

種々
(くさぐさ)

草に象られた陶造形約3,000本をつかったインスタレーション
平成19年(2007)
HUM/K535

Kaneko Tsukasa
Kusa-gusa(Diversity), Hagiware.
2007.

金子司さんは萩市生まれ。職人気質的な作陶には余り興味を得ず、緻密で繊細な表現手法を好む自己の性向に早くから気付いて、それをどのように造形化するかに熱中してきた作家です。とくにインスタレーションによる発表形式を積極的に展開し、着色した化粧土を掛け流して装飾したサイケディックな短小キノコの群生など、やや妖しげな雰囲気を漂わせた、幻視的でキッチュ感覚にあふれた作風が特徴です。

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